2010年10月18日

リンゴの歌


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カンサス州ウイッチタの学生時代(60年末期〜70年初頭)に歌を書き始めたというクリスチャン系SSW 『 Linda Rich 』 の3作目にしてラストとなった作品。前2作(69年/70年)を含め、彼女のアルバムを貫くスピリチュアルな静謐さは全作品に共通するもの。本作には管弦楽の装飾を配した楽曲も多少あるが、美しいメロディにのせた無垢なアルトヴォイスの心地良さは少しも損なわれていない。-- 全12曲中、メインとなるのは表題曲の "Apple Tree (A-1)" をはじめ数多く収録されているA・ギターの弾き語り。 彼女の素晴らしさは美しいアルトヴォイスにあるのは言うまでもないが、さらに魅力的なものにしているのが彼女のソングライティングの力。"Jesus Emmanuel (A-2)" 、"Stained Glass Windows (A-5)" 、 "There's Are Times (B-4)" などを聴くと良く分かるのだが、素朴ながらキャッチーなメロディを内包している。このメロディと声質の美しくも絶妙なバランスが、彼女の歌を何度聴いても心地良くさせる所以だろう。管弦楽入りの"Jesus Loves Me (B-5)"、フルートにセルフハーモニーの入った "Bless The Lord (A-6)"、フルートにベース入りの "Shells (B-3)"、"The Lord Is Holy (B-6)" など、多少の音の装飾もA・ギターの弾き語りの延長にある無垢なものだ。ステンドグラス風に描かれたリンゴの木の素敵なアートワーク -- 太陽の光がステンドグラスを通して暗い部屋をリンゴの赤や樹木の茶色に染めていく -- と、A面の5曲目に収録された "Stained Glass Windows" で歌っている。彼女をジョニ・ミッチェルに例えて紹介しているのを見たことがるが、華やかな表舞台の裏側でひっそりと咲いている名も無き美しさは同じカナダのボニー・ドブソンの方がしっくりくる。宗教色の強い歌詞内容の作品ながら、音楽好きの万人を惹きつけるのなら彼女の作品の中では一番だろう。-- 「 Linda Rich 」 が注目された頃、姉の消息を問いかける弟からのメッセージがネットに流された。彼女の作品がCD化された際にも情報を求める弟の連絡先が掲載されていた。弟さんの切なる声は彼女に届いたのだろうか。---
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2010年10月12日

男版マージ


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紹介済みの 「 Marj Snyder | My Lifetime Now 」 に楽曲を提供し、録音にも参加していたカリフォルニアのクリスチャン系SSW 『 John Fischer 』 の2作目。後にAOR寄りサウンドの名作を残していますが、この頃はフォーク色の強い素朴なフォークロックを奏でている。 リリースは 「 Ron Griffen / Bob Hurd 」 と同じ 「 F.E.L. Publications 」。両作ともコーラス隊(クワイア)を重視したプロダクションが施されていたが、本作はSSW作品らしい個としてのパーソナルな仕上がりだ。-- オリジナル10曲にカヴァー1曲プラスした、全11曲収録。A・ギターの弾き語り "Jesus Is My Song (A-2)" に "Sons Of Cain (B-2)"、ペダルスティールにコーラス隊のついたカントリーゴスペル "Way Of All Fresh (A-3)" に ハーモニカ入りの"Trust And Obey (B-5)"、タイトなドラムス入りのミディアム・フォークロック "Jesus In Me (A-4)"、ピアノに導かれるバラード "The Word (A-5)" に "Love (B-3)" などなど。宗教色の強い歌詞内容だが、70年代初頭のSSWらしい素朴な歌声を色々な音楽スタイルで聴かせてくれる。当時、交流のあったマージ嬢に似た男版 「 Marj Snyder 」 と呼んでもいい素敵な音楽だが、声質の無個性さが少し弱いところだろうか。-- 今も現役で活動している 「 John Fischer 」。初期作品のフォーキーな面は今の彼に望むべくもないが、SSW好きなら彼の初期作品だけは聴いても損はさせないだろう。---
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2010年10月06日

セピア色のスワンプ


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カナダと国境を接するニューヨーク州最北部の町・マセナの 「 Tom Gramuglia Studios 」 で録音されたSSW 『 Kirk Edwards 』 の'80年作。セルフプロデュース、多くが5分を超える長めのオリジナル全9曲収録。ゆったりとリズムを刻む乾いたドラムスの音色、ツボを心得たシンプルなバンドサウンド、どこか哀愁を秘めた絡みつくような渋いヴォーカル、スワンプと呼ぶほど重いドロドロ感はないけれどスワンプを聴くような心地良さを全編に漂わせている。-- 都会にきた田舎者の心情を歌った "From A City Night (A-1)"、全て5分を超える楽曲が収録されたB面 "For You (B-1)"、"Appaloosa Sky (B-2)"、"Borderline (B-3)"、表題曲の "Songs Of The Low Road (B-4)" の4曲はライトなスワンプと呼んでいいのかも知れない。旅情をそそる枯れた味わいの素朴なメロディ、歌詞にホーボー感のある語句が並んでいるところもカーク氏の音楽的資質はキャピトル時代のガスリー・トーマスあたりに近いだろうか。A・ギターの弾き語りにシンセなど多少の装飾を施した "Vacant Castle (A-4)" に "Provincetown (A-5)" などドラムレスのフォーキーな一面もいい雰囲気を持っている。曲がりくねった下り坂に佇むカーク氏、セピア色のジャケット意匠の渋さが彼の音楽の全てを語っている素敵な作品である。-- 本作に録音参加しているスライド・ギターの 「 Dan Gotham 」、ハーモニーVoの 「 John Kirbs 」、ドラムスの 「 Frank Carcaterra 」、ベースの 「 Michael Hatfield 」 等、多くの参加ミュージシャンが今も現役活動しているのを確認できる。残念ながら、肝心の主役である 「 Kirk Edwards 」 の情報にはアクセスできなかった。今も彼は音楽活動を続けているのだろうか。---
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2010年09月27日

秋の夜長のマージ


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カリフォルニアのクリスチャン系SSW 『 Marj Snyder 』 を紹介するのは、「 Let The Son Shine 」「 Content In You 」 に続き、これで3作目になる。-- 定番のトラッド "Amazing Grace (B-8)" を無伴奏で歌っている以外は、A・ギターの弾き語りが中心。耳元で囁きかけるような彼女の呟きヴォイスは魅力的なものだが、遺憾なくその魅力が発揮されている曲がA面に多く収録されているA・ギターの弾き語りになる。ベースのサポート入りの"Victorious Warrrior (A-1)"、コンガのリズムにのせた表題曲 "My Lifetime Now (A-2)"、A・ギターの弾き語り "You (A-3)" に "Peace (A-6)"、当時交友のあったSSW 「 John Fischer 」 の助演を受けた "High On The Love Jesus (A-4)" に "Lord Of Glory (A-5)"。勿論、B面にも "So Much More (B-2)"、"Chicago (B-3)"、"For Those Tears I Died (B-6)" などA・ギターの弾き語りがあるが、曲そのものが短くじっくり味わうところまでいかないのは残念なところだろうか。バンドスタイルのバックがついた "I'm Dying (B-1)"、ペダル・スティール入りの愛らしいメロのカントリーソング "Knees Knockin' (B-5)" なども心地いいものだが、やはりA・ギターの弾き語り曲が耳に残ってしまうのは仕方がない。出来れば、全編A・ギターの弾き語りで埋め尽くされた暖かな歌声を聴きたいところ。それでも、過去4作品を聴いたことのある方なら彼女の作品の中で一番の出来だと思うのに異論はないだろう。-- 「 Marj Snyder 」 の前を彩る黄色い花をつけた植物の名前は何というのだろう。ジャケット写真が撮られた季節は春だったのだろうか。こちらは、酷暑も遠くへ去りすっかり秋の気配。過ごしやすい季節に、彼女の暖かな歌声は良く似合っている。---
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2010年09月20日

秋の虫楽団


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エアコンなしには今年の夏の暑さはさすがに厳しく、ターンテーブルにレコードがのる機会もなく音なしの生活を強いられた。9月も終わりに近づき、さすがの暑さも去り朝夕の空気にはすっかり秋の気配が漂ってきた。半袖では肌寒さを感じるほどの犬と歩くいつもの散歩道、空き地を覆う草むらからは秋の虫たちの賑やかな合唱が聞こえてくる。-- 紹介済みの 「 Sonfolk 」 と同名、こちらは20数名からなるアイオワのクリスチャン系フォークグループ 「 Sonfolk 」。ジャケットに描かれているバスに乗って一緒に旅し、各地で聖歌隊のゴスペル音楽(クワイア)を披露していたユースグループのようだ。A面は、男性のソロ中心にコーラスをプラスしたもの。B面は、2曲を除きコーラスものが主。全12曲収録、オリジナルにカヴァーものを織り交ぜながら心地いいコーラスを聴かせてくれる。特に、男性陣がソロをとっている "Jesus Is The Answer (A-1)"、"Come Brother And Sister (A-2)"、"Have You Seen My Jesus (A-3)"、All He Wants Is You (A-6)"、"The Man (B-1)"。唯一、女性がソロをとっている "If That Isn't Love (B-6)" などはコーラスものを敬遠しがちな耳にもすんなりと聴ける仕上がりだ。奇しくもミネソタの同名グループ 「 Sonfolk 」も故「 Larry Norman 」 作 "I Wish We'd All Been Ready (A-4)" を採り上げていたが、アイオワの 「 Sonfolk 」 も同じ曲をやっているのは単なる偶然だろうか。こちらの 「 Sonfolk 」 は美しいメロディの同曲を美しいコーラスで聴かせてくれる。採り上げる曲の美しさ次第だろうが、この曲を聴いているとコーラスものも悪くはないなと思ったりするから不思議なものである。-- 彼等にはもう2作品が別にあり、未聴だがすでに手元にある。秋の虫たちの合唱を聴きながら 「 Sonfolk 」 の美しいコーラスを聴いてみるのも一計。短くも過ごしやすい一瞬の季節、ターンテーブルにレコードがのる機会も多くなりそうだ。---
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