2007年03月21日

ストロング・ソング。


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オランダの「Stoof」と「Munich」の両レーベルは良質のトラディッショナルやフォーク系の作品をリリースしていた好きなレーベルだった('80年代前後から、両方のレーベル・ロゴが併記されるようになる)。そんなレーベル固有の伝統的な作品群の中にあって、英国のSSW「Jon Strong」の音楽は異色な存在だった。一応、個人名義になっているが正確には「Jon Strong Band」。4ピースのバンド形態をベースに'70年代のご機嫌なウェスト・コースト・サウンドを聴かせてくれる。オープニング曲"Rosalita"は「CSN&Y」を思わせるコーラスが心地いいカントリー・タッチのフォーク・ロック。ピアノの弾き語りから始まるミディアム・テンポのバラード"Lover in Disgrace (A-2)"はまるでイーグルス。楽曲の中盤から入るA・ギターとドラムが曲調をドラマチックに盛り上げ、さらに泣きのE・ギター・ソロがダメ押しをかける。美味しさテンコ盛りの典型的なアサイラム・サウンドである。彼の音楽キャリアに、サンフランシスコなど西海岸を拠点にコーヒーハウスなどのライブ・サーキットの経験がある。この'70年代中期のアメリカにおける一年あまりの経験が、彼の音楽性に多大な影響を与えたのだろう。以前、このブログで紹介し彼自身が「音楽の友」と語っている英国のフォーク・デュオ"Kiren Halpin & Tom McConville"がB・ヴォーカルとフィドルでバンド・サポートしている。また、デュオの作品には「Jon Strong」が録音に参加しているので彼等との関係は密だったようだ。個人的には、もう少しこのデュオの作品のように素朴に表現されたアコースティックな音が好みだが、それでも全曲で良質のフォーク・ロックが堪能できる。この作品後もシングルやアルバムをリリースしオランダのヒット・チャート22位にランクされるなどの活躍をみせているが、'80年代中期にはそのオランダに見切りをつけ英国の音楽シーンに舞い戻っている。今現在、母国で作品をリリースするなど自身のバンドと共に「ストロング・ソング」を歌い続けている。---
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2007年03月20日

センシティブな伝統音楽。


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スコットランドのトラッド・バンド「The Battlefield Band」の'77年のデビュー作と翌年リリースの2作目まで在籍していた「Jamie McMenemy」。彼がオランダに渡り、バンド仲間の「Brian McNeill」のプロデュースもと録音したソロ作品。ヴォーカルに自身の奏でるA・ギターにブズーキ・マンドリン・ホイッスル。ブライアン氏はプロデュースに加え、フィドルにコンサーティーナとボーカルで。このソロ作の後に「Kornog」を共に結成することになるフィドル&マンドリン・プレイヤー「Christian Lemaitre」等がバックサポートしている。全10曲が収録されているが、トラッド一色という選曲。ジャケットの印象やアルバム・タイトルがいかにもSSW然とした感じだが、その手の音を期待する人には少々馴染めないかも知れない。スコティッシュやアイリッシュ・フォーク、ケルト・ミュージックなどが馴染んでいる耳にはスンナリと入ってくる。多数の楽器を使用した厚みのあるバンド・アンサンブルではなく、ごく限られた伝統楽器がサポートしているので歌声が際立って聴こえてくる。この辺にソロ作品が好きな個人的理由があるのだが、彼の場合もこれに当てはまる。"The Fisherman's Wife (A-2)"は、A・ギターの弾き語りにロウ・ホイッスルの響きが何とも言えない切ない気分にしてくれるバラッド。"The Demon Lover (A-4)"や"Bonnie Jean Cameron (B-3)"も同様に哀愁を帯びたバラッドである。そんなバラッド曲と対比するようにジグなどのインストも収録されている。跳ねるようなジグのリズムが優しいバラッド達のメロディを一層美しく響かせてくれる。「Traditional music of Scotland and Brittany, interpreted with originality and sensitivity..」と、ライナーの一節にある。彼の独創性とセンシティブな感性で解釈されたスコットランドとブルターニュの素敵な伝統的音楽たちである。---
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2007年03月18日

パブロフの人になる。


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オランダの心優しきSSW「Gerard Van Maasakkers」。'78年のデビュー作に続く2作目の作品。表題曲"Vur De Wind (A-1)"をはじめ自身の手になるオリジナルが9曲にトラッドが3曲ある。彼の場合はSSWと呼んでもいいだろう。伝統的な音楽であるトラッドを忠実に踏襲するのもいいが、トラッドとコンテンポラリーの狭間にあるような歌のカタチが個人的には理想的。さらに、歌声が引き立つシンプルでアコースティックなアンサンブルで聴かせてくれると言うことはない。彼は、その両方を十分に満たしてくれる。無伴奏のシンギングではじまり、次小節からA・ギターの弾き語りにヴァイオリンとアコーディオンがメロディをなぞるように一緒に歌いだす。この表題曲を聴くだけで彼の表現したかったアルバムの全体像が伝わってくる。曲によって、サポートするのがマンドリンだったりクラリネットだったりと変化するが、基本はA・ギターの弾き語り。一曲だけ突出した出来のいい曲があるのではなく、全てが小粒でもピリリと心に響く素敵な曲ばかりだ。sb_145b.jpgこの手のトラッド系のSSWの作品を聴くといつも感じるのだが、そのメロディラインに郷愁感も似た懐かしさを覚えてしまう。英国で生まれた訳でもなく、子守唄がわりにトラッドを聴いて育った訳でもないのに、何故かノスタルジックな感情に襲われる。素朴で哀愁を帯びたトラッドの音色を聴くと、すっかりパブロフの犬の心理状態になってしまう自分がいる。多分、小学生の頃に唱歌として聴いた「グリーン・スリーブス」「ホーム・スウィート・ホーム」などのイングランド民謡が「心のひだ」のどこかに刷り込まれているのかも知れない。彼は今も現役で活躍している。近年の作品は聴いたことはないが、今も彼はパブロフの犬の気持ちにしてくれるだろうか?---

Gerard Van Maasakkers Official Site
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2007年03月16日

晴れのち、オポ。


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いかにもサイケやアシッドの音が聴こえてきそうなジャケ意匠はオランダの4人組フォーク・バンド「OPO」の一作目。「Evert Elderson (Vocal, A.Guitar. Mandolin, Dulcimer, Harmonium)」「Theo Harrewijn (Vocals, Double bass, Irish Harp, Flute)」「Han Schaeffer (Vocals, A.Guitar)」「Lenneke De Vries (Vocals, Flute, Tin whistle)」の女性1人に男性3人という編成。トラッド中心の選曲にプラス、英国のフォーク・シンガー「Cyril Tawney」作と「Bert Jansch」作にオリジナル2曲、全10曲が収録されている。一応、バンド形態はとっているが4人全員のアンサンブルで聴かせる楽曲は少ない。男性がL・ヴォーカルをとればサポートするのはA・ギターにフルートだけといった具合で、バンドでなければという必然性はあまり感じない。"Patrick Sheehan (A-2)"や"Illusion and Reality (A-4)"、女性がL・ヴォーカルをとる"Green are Your Eyes (B-3)"がそれに該当する。インスト4曲(A-3,A-5,B-2,B-6)と無伴奏が1曲(B-1)あるが、これらには楽器演奏やコーラスを聴かせる4人編成バンドとしての存在理由が感じられる。B面にいい曲が多い。女性がヴォーカルをとり男性陣のハーモニーがつく"The Wild Mountain Thyme (B-3)"とA・ギターにフルートだけの"The Lowlands of Holland (B-5)"。美しいメロディをもったミディアム・テンポのフォークソングらしい曲である。この2曲だけが唯一明るさを感じさせてくれるが、アルバム全体は陰鬱でドンヨリとした重々しい空気に満ちている。明かりを消した暗闇、蝋燭の灯りの下でヴォリームを上げて聴けば幻想的なトリップ世界へ誘ってくれそうである。そういう意味では、このバンドは十分にアシッドしてるのかも知れない。このバンドは2作目「OPO 2」を残して解散しているが、こちらも荘厳で気品に満ち溢れた音を聴かせてくれる。個々の好みで評価の分かれそうだが、個人的には好きなバンドである。---



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2007年03月14日

音の印象派。


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オランダのフォーク・グループ「Wolverlei」の2作目でこのバンドの最後になった作品。一作目では、「Kees van der Poel」と「Frans Smulders」のデュオにバック・サポートがつく編成だったが、この作品からサポート・メンバーだった「Marten Scheffer」「Rens van der Zalm」の2人が合流し4人編成バンドとなっている。公用語であるオランダ語で歌われ、彼等の情報記事に関してもオランダ語で表記されているものがほとんど。少ない英文情報から彼等の紹介記事を一部抜粋すると「Wolverlei was the best acoustic folk group the Netherlands have ever had. They only recorded two albums, but they are both classics. Although they worked with traditional material, they managed to invent a new and modern sound」と、賞賛する記述がある。記述にあるようにトラディッショナルを素材にしてはいるが、伝統的な重苦しさを感じる敷居の高さはなく、とても耳に馴染みやすい暖かな音を聴かせてくれる。また、語尾を鼻から抜くようなオランダ語独特の歌い回しが歌に柔らかな表情を加えて聴こえてくるので妙に心地いい。個人的には名曲だと思う"Een Ruiter Langs De Straat (A-3)"に彼等の素晴らしさが象徴されている。マンドリンの爪弾きにのせて歌われる子守唄のような優しいメロディ。途中からA・ギターとフィドルがそのメロディをなぞるように一緒に歌いだす。6分ちょっとの長めの曲だが、どこか遠い昔に耳にしたことがあるような懐かしさを覚える本当にいい歌だと思う。インストも数曲あるが、アコースティック楽器の極上のアンサンブルは歌なしでも充分聴ける。日本の九州ほどの国土しかなく世界有数の人口密度の高い国のオランダ。レンブラントやゴッホを輩出した芸術の国らしいジャケット意匠も彼等の音楽同様に素敵である。---
posted by beck at 12:55| Comment(0) | 音楽(NL) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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