2008年03月25日

足で聴く音楽


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サンフランシコ生まれのSSW『Tucker Zimmerman』の5作目。'66年、フルブライトの教育支援プログラムでイタリアへ。この頃からローマのフォーククラブで歌っていたようだ。'68年には学業に見切りをつけ本格的な音楽活動を始める為にロンドンへ渡っている。そして、'70年に終の棲家となるベルギーへ。-- そのベルギーの自宅にあるホームスタジオ録音は前作「Foot Tap」でお馴染みのパターン。自身の奏でる(12 string guitars, Harmonicas, Organ, Bass, Synthesizers, Auto-harp, Percussion)にのせ、渋い歌声を聴かせてくれる。基本はカッティングストロークによる弾き語りだが、メロディの美しさよりA・ギターのストロークによるリズム重視で聴かせるタイプの楽曲が多い人だ。無論、その音楽スタイルにB・ディランの洗礼を受けた後は垣間見られるが、個人的にはアコースティックな「J.J.Cale」といった印象を持っている。起伏なく単調にリズムを刻むA・ギター、そのリズムを強調するためのハーモニカやパーカッションの存在。個々の楽曲が持つ特有のメロディは不鮮明で、悪意を持って言えば紋切り型。しかし、彼の音楽は、自然と足先でリズムを刻んでしまう心地良さがある。この心地良さのツボに嵌ったら、なかなか抜け出せない魔力を持った音楽だ。"Brother John (A-5)"は、A・ギターとハーモニカのディランスタイルで聴かせてくれるスロー目のホーボーソング。こんなタイプの楽曲の割合がもう少しあったら、さらに魅力的だっただろう。-- 当時交流のあった英国のSSW「Wizz Jones」やアメリカの今は亡きバンジョー弾き「Derroll Adams」等は好んで彼の曲をカヴァーしていた。'84年以降、コンサート活動も曲を書くことからも離れていたが、暫くの休止期間を挟んで'96年から再び音楽活動を始めている。---

Tucker Zimmerman Official Site
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2007年01月24日

ランブリン・マン。


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Ranblin' Jack Eliott」共に英国を手始めにヨーロッパ中を旅しアメリカン・フォークの種を蒔いたランブリン・マン「Derroll Adams」が亡くなって早7年。アルバムのリリースも英国・ドイツや終の棲家を構えたベルギーと多国に渡る。'74年リリースの"Movin' On"はドイツのレーベルから。録音はドイツ、トラディショナルを中心「Woody Guthrie」作を2曲、「John Prine」作の"Paradise (B-1)"、「Tukcker Zimmerman」作"Aged Woman-Peasant Girl (A-7)"、タイトル曲になっている「Hank Snow」作"Movin' On (B-5)"など、全12曲を収録。友人等の「A・ギター、リコーダー、マウス・ハープ、B・ヴォーカル」などのサポートを受け、素晴らしい歌声を聴かせてくれる。彼の声質について、ある英語サイトで「Deep Voice」と紹介しているのを見かけたことがあるが、正にその歌声はディープ。どこまでも太く深みのあるいい声をしている。バンジョー弦の細い金属音と太い声質がユニゾンしている様は楽器と声の美しいハーモニーを聴いているような心地良さである。65歳の誕生日にはベルギーで「Deroll Adams 65th Birthday Concert ('91年)」。2002年には、彼の死を偲んだトリビュート作品「Banjoman」が「Arlo Guthrie」等の企画で制作されている。企画人の一人でもある「Hans Theessink」のサイトで、このトリビュート作品に収録されている"Columbus Stockade Blues"のビデオを見ることが出来るが、「Arlo GuthrieDonovan、Hans Theessink」の歌声は鳥肌モノである。裏ジャケには、生まれたばかりの愛娘「レベッカ」と一緒の写真。家族を愛し、多くのフォーキー達に愛されたミュージシャンの中のミュージシャンだった。---

Derroll Adams Official Site
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2007年01月21日

フォーク・サミット。


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「世界のフォーク界の将来の展望を語り合うフォーク・サミットがドイツで開催された」--- 。政治家たちが年に一度集う先進国首脳会議「サミット」風に言えば大げさだが、欧米を代表するフォーキーたちがドイツのレーベル「FolkFreak Records」に一同に会したアルバムが「Folk Friends 2 (2枚組み)」。'78年の「Folk Friends 1」に続くもの。アメリカ代表には「Derroll Adams, Ranblin' Jack Elliott, Guy & Candie Carawan」。英国代表には「Alex Campbell, Dick Gaughan, Wizz Jones, Andy Irvine, Dolores Keane..」等。開催国ドイツからは「Werner Lammerhirt, Hannes Wader」。前作とほぼ同じ顔ぶれ、世界のフォーキーたちが和気あいあいの歌声を競い合っている。政治家が集うサミットは、自国の権利を主張し合い議論を戦わせる場だが、ここでの彼等の共通言語は演奏し歌うこと。「Andy Irvine」がウディー・ガスリー作"Seamen Song"を歌えば、「Derroll Adams」がトラッド曲"Columbus Geogea"で答える。「Ramblin' Jack Ellott」がボブ・ディラン作"Don't Think Twice It's All Right"を歌えば、「Dick Gaughan」がトラッド曲"The Father's Song"で答える。現実から乖離した絵空事の世界でも、演奏し歌うことだけを愛するフォーキーたちの世界に争いごとの種は生まれない。ここには、音楽を通して語り合う平和な時間だけが流れている。---

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2007年01月14日

欧米かよ!


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ドイツのレーベルでありながら、英国勢を中心にしたフォーキーたちの作品を数多くリリースしてくれた「Autogram Records」。いま思うと、「欧米かよ!」とツッコミを入れたくなるほど素敵なレーベルだった。'60年代に「Incredible String Band」からスタートし「Famous Jug Band」へ。そして「C.O.B」へと地味ながら確かな足跡を残してきたバンジョー弾き「Clive Palmer」。よほどの好き物でないと一筋縄では聴けない呪文サウンドが多い彼。この作品でも、虚脱感ヴォーカルは相変わらず。スリー・フィンガー・スタイルのバンジョーやパイプを奏でながらトラッド曲(インスト半分)を中心にのんびりと演っている。中でも、バンジョーを爪弾きながら聴かせてくれるボブ・ディラン作の"The Girl From The North Country (A4)"。長閑な田園風景を眺めながら、こんな歌が流れてきたら気分いいだろうなあ。そんな事を思わせてくれるのも、彼の音楽スタイルが自然のリズムにシンクロしているからだろうか。急ぎ過ぎる現代社会とは違った、ゆったりとした時間が彼の音楽には流れている。近年、ソロ作「All Roads Lead To Land」や「Incredible String Band」「Famous Jug Band」の再結成音源を届けてくれるなど精力的に活動しているようだ。急ぎ過ぎる時間に疲れたら、彼の音楽が癒してくれる。---
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2006年12月24日

伝えゆくもの。


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時代を越え、人から人へ世代を越えて語り継がれ伝承されていく歌がトラディッショナル・ソングなら、それは無伴奏で歌われる姿が自然な形態なんだろうと思う。しかし、レコードという商業主義におけるトラッドの形態には、ある程度の音の装飾を加えていくのは仕方のないことなのかも知れない。「Fisher Family」の末娘「Cilla Fisher」、その夫君「Artie Trezise」コンビによるスコティッシュ・フォークデュオ。彼等の作品では、同年リリースされたトラッド名門レーベル「Topic Records」からのものが評価も高く良く知られている。トピック盤には兄である「Archie Fisher」のA・ギターや「Allan Barty」のフィドルとメロディオンのサポートがついているが、この本作はアコースティック・ギターだけ。まず先に二人の歌があり、その歌心を増幅するための装置がA・ギターという関係に思える。トラッドなのにコンテンポラリー・ソングを聴くような親しみを持って、時には優しく、そして力強く歌いかけてくる二人。商業主義の流れに棹差すフォーク・デュオの理想がこのレコードには刻まれている。---
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