2010年11月14日

ワークソング


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裏ジャケットには、ミシガン湖をゆく船上から撮られた一葉の写真が使われている。撮ったのは、本作の主人公 「 Danny 」 氏のファーストメイトの女性 「 Carol Jo 」 と 「 Dorothy 」。アルバムタイトルにもなっている表題曲 「 Michigan Highways (A-1) 」 は、ダニー氏のコンタクト先になっているナッシュビルから本作のリリース元 「 Western Night Productions 」 の所在地・ミシガンへの旅途中を歌ったものだろうか。それとも、同居していた女性の故郷があった州なのだろうか。素朴なメロディ、全編を漂うハーモニカの音色にのせたA・ギターの弾き語りは朴訥な声質とも相まって旅情を誘う素敵な歌に仕上がっている。-- 全10曲オリジナル、フィドル?にハーモニー、打楽器音など少しのサポートは受けているが全てA・ギターの弾き語り。" 湖上の砲艦" と題された "Gunboats On The Great Lake (A-2)"、仕事はハードでも実入りは少ないと嘆いている "Hard Work And Low Pay (A-5)"、"全ての老人の為に" と題された "For All The Old Men (B-2)"、大工さんを歌った "The Carpenter (B-3)"、曲名からも、重労働に日々汗する人々を歌った社会的メッセージの強い労働歌のようだ。sb_463b.jpg上流社会の女性を歌った "Superior Lady (A-4)" などは、無駄に贅沢三昧の生活をおくる女たちに下層階級目線の皮肉を込めた歌詞内容ではないかと想像している。ややトラッド色を感じさせるリズム重視の重く暗い楽曲もあるが、ブルースがそうであるように、下層階級の日々の不満や怒りを込めた労働歌とはそういうものだ。ダニー氏が歌を書く意味合でも込められているのだろうか、ラストを飾る "I Wrote A Song (B-5)" の美しいメロディにのせたA・ギターの引き語りには、オープニングの表題曲と共に魅せられ救われる。身の上の不遇や不満を歌っていても、心地良いメロディにのせた歌声に幸せな明日を迎えたいと願う希望の明るさを感じるからである。-- 「 Danny 」、楽曲名と僅かな情報があるだけで彼のフルネームすらクレジットはない。今も、アメリカのどこかで心の鬱積を歌にぶつけているのだろうか。
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2010年11月01日

音楽の欠片


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コンガの刻む心地いいリズムにのせてビートルズの "And I Love Her (A-2)" を聴かせてくれるのはイリノイのクリスチャン系SSW 『 Jeff Grosser 』 。 「A Part Of Me -- 私の一部 -- 」 と題された作品には、フォーク・カントリー・スウィング・AORなど様々な音楽スタイルで表現された楽曲が収められている。セルフプロデュース、ジョン&ポールの1曲を除けば全てオリジナル、全10曲収録。自身の6&12 A・ギターにバンドスタイル ( Electric & Acoustic Guitar, Piano, Bass, Percussion, Saxophone, Flute, Banjo ) のサポートがつく。アルバム全体を貫くのはAORだが、A面はフォーク色、B面はAOR色が僅かに強いだろうか。爽やかなハーモニー入りのカントリーフォーク "I'm Coming Home (A-1)"、フルートとA・ギターだけで歌われる素敵なフォークバラード "Julie's Rainbow (A-3)"、ドラムスの刻むリズムだけで歌い始め途中から音の厚みを加えていく "Charlotte's Web (B-2)" のスウィング感などは最高である。A・ギターとピアノだけで歌っているバラード "Crazy Blue Eyes (B-4)" の静けさも心に響いてくる。バンジョー入りのカントリーソング "Chicago Girl (B-1)" だけは少々の違和感があるが、これも表題通り、様々なアメリカ音楽の影響を受けてきた彼の "私の一部" なのだろう。それでも、数多く存在する素敵なレリジャス系SSWの一人であることには間違いない。-- 録音にも参加しジャケットのロゴデザインを手がけている 「 David Van Delinder 」。シカゴのSSW 「 Bonnie Kolock 」 に楽曲を提供しているし、近年はデザイナーとして活動しながら 「 Candice Keenon 」 とのデュオ作品を残している。 「 Jeff Grosser 」 の確かな情報にはアクセス出来なかったが、彼は今もシカゴ界隈で音楽を続けているのだろうか。
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2010年10月18日

リンゴの歌


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カンサス州ウイッチタの学生時代(60年末期〜70年初頭)に歌を書き始めたというクリスチャン系SSW 『 Linda Rich 』 の3作目にしてラストとなった作品。前2作(69年/70年)を含め、彼女のアルバムを貫くスピリチュアルな静謐さは全作品に共通するもの。本作には管弦楽の装飾を配した楽曲も多少あるが、美しいメロディにのせた無垢なアルトヴォイスの心地良さは少しも損なわれていない。-- 全12曲中、メインとなるのは表題曲の "Apple Tree (A-1)" をはじめ数多く収録されているA・ギターの弾き語り。 彼女の素晴らしさは美しいアルトヴォイスにあるのは言うまでもないが、さらに魅力的なものにしているのが彼女のソングライティングの力。"Jesus Emmanuel (A-2)" 、"Stained Glass Windows (A-5)" 、 "There's Are Times (B-4)" などを聴くと良く分かるのだが、素朴ながらキャッチーなメロディを内包している。このメロディと声質の美しくも絶妙なバランスが、彼女の歌を何度聴いても心地良くさせる所以だろう。管弦楽入りの"Jesus Loves Me (B-5)"、フルートにセルフハーモニーの入った "Bless The Lord (A-6)"、フルートにベース入りの "Shells (B-3)"、"The Lord Is Holy (B-6)" など、多少の音の装飾もA・ギターの弾き語りの延長にある無垢なものだ。ステンドグラス風に描かれたリンゴの木の素敵なアートワーク -- 太陽の光がステンドグラスを通して暗い部屋をリンゴの赤や樹木の茶色に染めていく -- と、A面の5曲目に収録された "Stained Glass Windows" で歌っている。彼女をジョニ・ミッチェルに例えて紹介しているのを見たことがるが、華やかな表舞台の裏側でひっそりと咲いている名も無き美しさは同じカナダのボニー・ドブソンの方がしっくりくる。宗教色の強い歌詞内容の作品ながら、音楽好きの万人を惹きつけるのなら彼女の作品の中では一番だろう。-- 「 Linda Rich 」 が注目された頃、姉の消息を問いかける弟からのメッセージがネットに流された。彼女の作品がCD化された際にも情報を求める弟の連絡先が掲載されていた。弟さんの切なる声は彼女に届いたのだろうか。---
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2010年10月12日

男版マージ


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紹介済みの 「 Marj Snyder | My Lifetime Now 」 に楽曲を提供し、録音にも参加していたカリフォルニアのクリスチャン系SSW 『 John Fischer 』 の2作目。後にAOR寄りサウンドの名作を残していますが、この頃はフォーク色の強い素朴なフォークロックを奏でている。 リリースは 「 Ron Griffen / Bob Hurd 」 と同じ 「 F.E.L. Publications 」。両作ともコーラス隊(クワイア)を重視したプロダクションが施されていたが、本作はSSW作品らしい個としてのパーソナルな仕上がりだ。-- オリジナル10曲にカヴァー1曲プラスした、全11曲収録。A・ギターの弾き語り "Jesus Is My Song (A-2)" に "Sons Of Cain (B-2)"、ペダルスティールにコーラス隊のついたカントリーゴスペル "Way Of All Fresh (A-3)" に ハーモニカ入りの"Trust And Obey (B-5)"、タイトなドラムス入りのミディアム・フォークロック "Jesus In Me (A-4)"、ピアノに導かれるバラード "The Word (A-5)" に "Love (B-3)" などなど。宗教色の強い歌詞内容だが、70年代初頭のSSWらしい素朴な歌声を色々な音楽スタイルで聴かせてくれる。当時、交流のあったマージ嬢に似た男版 「 Marj Snyder 」 と呼んでもいい素敵な音楽だが、声質の無個性さが少し弱いところだろうか。-- 今も現役で活動している 「 John Fischer 」。初期作品のフォーキーな面は今の彼に望むべくもないが、SSW好きなら彼の初期作品だけは聴いても損はさせないだろう。---
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2010年10月06日

セピア色のスワンプ


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カナダと国境を接するニューヨーク州最北部の町・マセナの 「 Tom Gramuglia Studios 」 で録音されたSSW 『 Kirk Edwards 』 の'80年作。セルフプロデュース、多くが5分を超える長めのオリジナル全9曲収録。ゆったりとリズムを刻む乾いたドラムスの音色、ツボを心得たシンプルなバンドサウンド、どこか哀愁を秘めた絡みつくような渋いヴォーカル、スワンプと呼ぶほど重いドロドロ感はないけれどスワンプを聴くような心地良さを全編に漂わせている。-- 都会にきた田舎者の心情を歌った "From A City Night (A-1)"、全て5分を超える楽曲が収録されたB面 "For You (B-1)"、"Appaloosa Sky (B-2)"、"Borderline (B-3)"、表題曲の "Songs Of The Low Road (B-4)" の4曲はライトなスワンプと呼んでいいのかも知れない。旅情をそそる枯れた味わいの素朴なメロディ、歌詞にホーボー感のある語句が並んでいるところもカーク氏の音楽的資質はキャピトル時代のガスリー・トーマスあたりに近いだろうか。A・ギターの弾き語りにシンセなど多少の装飾を施した "Vacant Castle (A-4)" に "Provincetown (A-5)" などドラムレスのフォーキーな一面もいい雰囲気を持っている。曲がりくねった下り坂に佇むカーク氏、セピア色のジャケット意匠の渋さが彼の音楽の全てを語っている素敵な作品である。-- 本作に録音参加しているスライド・ギターの 「 Dan Gotham 」、ハーモニーVoの 「 John Kirbs 」、ドラムスの 「 Frank Carcaterra 」、ベースの 「 Michael Hatfield 」 等、多くの参加ミュージシャンが今も現役活動しているのを確認できる。残念ながら、肝心の主役である 「 Kirk Edwards 」 の情報にはアクセスできなかった。今も彼は音楽活動を続けているのだろうか。---
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