2007年09月05日

枯葉の人


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夏の暑さにあれほど賑わっていた海。その海に沿って走る車窓から眺めた浜辺に人の姿は少なかった。過ぎ去る夏を惜しむように、浜辺に佇み寄せる波を見つめる人影が疎らにポツンポツンと。海辺もすっかり秋の装いである。寄せる波の効果音からはじまる"Sea Fever (A-3)"は、「Earnie Graham」の故郷・北アイルランドは「ベルファスト」の海の音だったのだろうか。アイリッシュ・トラッド風味な"Belfast (B-4)"で歌っている「ベルファスト」は、カトリック系とプロテスタント系住民同士が争った北アイルランド紛争の最も激しかったところ。そこで生まれ育った彼には、日本人に計り知れない思い入れがこの曲にはあったはずである。「Help Yourself」や「Brinsley Schwarz」等のバンドメンバーたちにサポートを受けた彼唯一のソロ作品。喜びと希望に満ち溢れた新緑の季節より、森羅万象のものが枯れゆく厳しい季節が良く似合う。秋色に染めたジャケット意匠がそれを物語っている。sb_217b.jpg"Sebastian (A-1)"、"So I Lonely (A-2)"、"The Girl That Turned The Lever (B-3)"。どの楽曲たちも、シガーの煙にギネスビール、酔客たちの陽気で賑やかな戯言が飛び交うパプに相応しい音楽ではない。彼の音楽が好きで、彼の音楽だけに浸りたい人だけが向き合える音楽である。枯葉が舞い落ちるゆったりとした時間の流れに人生の侘しさを覚える。彼の音楽には、そんな時間の一瞬の侘しさが凝縮されている。-- 「Eire Apparent」「Help Yourself」、ソロ作品の後「Clancy」への参加、「Nick Lowe」に後押しされた「Stiff」からのシングル・リリース。大きな成功を収めることなく2001年に枯葉の如く逝ってしまった。---

posted by beck at 09:22| Comment(2) | 音楽(UK) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。ぼんやりネットを辿っていたら、思いがけなく素晴らしいブログに出会えて感激しきりなのです。
取り上げている音楽も、素敵な文章も、デザイン(ジャケットの紹介の仕方が秀逸ですね)も、すべてがグッときてしまうのです。

アーニー・グレアムのこのアルバムは、私も大好きです。そしてbeckさんのレビューは今まで読んだアーニーに関するどの文章より、私の心を揺さぶったということをここに書いておかねばなりません。
Posted by nyarome007 at 2007年11月07日 00:36
こちらこそ、はじめましてです。
レビューなど書くよりも、音楽は聴いてもうらうのが一番いいのですが。その音楽を文章だけで表現し伝えるとなるとなかなか難しいものですねえ。まあ、立派なレビューはその道の専門家に任せるとして、個人的には思いのままの気持ちを素直に書き綴るといったところです。「AFTER THE GOLD RUSH」、以前から拝見させて頂いています。最新記事の「Help Yourself」には思わずニンマリ。個人的には、彼等の作品の中では一番のお気に入りです。


Posted by beck at 2007年11月08日 11:24
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