
プロデュースに、ゴスペル界の大物「
John Pantry」。A&E・ギターにパブロッカー「
Micky Jupp
」のバンド「Legend」にいた「
Mo Witham」。キーボードにプログレッシブ・ロックバンド「After The Fire」の「
Peter Banks」。英国ロックの表舞台で活躍していた面子をバックに制作されたクリスチャン系夫婦デュオ『
Helmut & Elisabeth』。郷に入れば郷に従え、ポップロックな世界で活動していたミュージシャンたちも抑制の効いた穏やかな演奏で二人の歌声を支えている。-- 全10曲、オリジナルはなくクリスチャン系SSWのカヴァーものだけ。1800年代に活躍していた賛美歌の作曲者であり歌い手でもある「
Philip Bliss」作に加え、「Bill Gaither, Larry Norman, A. Crouch」等の米国勢の作品。「Graham Kendrick, Len Magee」の英国勢の作品が並んでいる。ワルツ調の静かな楽曲が多いせいもあるだろうが、本作の魅力は何と言っても二人の心温まる優しい歌声だろう。中でも、「Philip Bliss」作の"I Will Sing Of My Redeemer (A-1)"と「
Graham Kendrick」作の"In Your Way (A-2)"に尽きる。前者は、子守唄のような心地良さをもったワルツ調の楽曲、後者はサビ部に名曲"Killing Me Softly (邦題:優しく歌って)"を彷彿とさせるメロディを持った美しい楽曲である。この2曲に限らずだが、他の楽曲でもヴォーカルの明確なリード性はなく、そこには寄り添い補い合う夫唱婦随の歌声があるだけ。なんと、聴く者の心を温もりで満たしてくれる穏やかな歌声だろうか。表題「Gentle Breeze」通り、二人の歌声が優しい風となって耳元を撫でていく、そんな音楽が詰まった素敵な作品である。-- 本作が録音された「
ICC Studios」を30年もの長きにわたって取り仕切っていたという『Helmut & Elisabeth』。そのスタジオを離れた夫婦に捧げられた賛辞が掲載されたブログ「
Helmut and Elisabeth rock!」がある。そこには、共に働いていたスタッフや二人に縁のあるミュージシャン「
Bryn Haworth
」等の名前が見える。英国ゴスペル・ミュージック界で重要な位置にいた夫婦だったのではないかと推察している。---