2009年10月31日

アーバンフォーク


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ボストン界隈のSSWたち ( Geoff Bartley / Bob Franke / Rick & Lorraine Lee ) 等が録音に参加しているマサチューセッツのSSW 『 Chuck Hall 』 の1作目。"One Night In A Cheap Hotel - 安宿の一夜-" なんて素敵な表題がつけられているが、A・ギターを基調とした彼の心優しき歌声を聴いていると数十年前に数ヶ月を暮らしていたロスの安宿での日々を思い出してしまった。-- "All Music Guide" には、彼の音楽スタイルのことを "アーバンフォーク" ( Hall is a Boston-area writer of quite graceful, direct songs about day-to-day life ) と紹介している。日々の生活の風景を歌に託しているように、レストラン、クリマスタイム、クリスマスツリー、Tシャツ、ハイファイ・セットなどの言葉が聴き取れる。フィドルの切ない響きが情感を煽るバラード "The Cat Lady's Dance (A-2)"。A・ギターの弾き語りのバラード "Purple Herats (A-3)"。アイリッシュ・フォークの薫りのする "The Dollmarker's Secret (A-4)" に "Nickles And Dimes (B-4)"。ナット・キング・コールの歌うモナリザが流れるひと時の心象風景を歌ったバラード "That Nat King Cole (B-2)"。A・ギターの弾き語りのラブ・バラード "Love Comes To The Simple Heart (B-5)"。全10曲オリジナル、どの歌も、安宿で一夜を寂しく過ごす孤独な男の姿が見えてくる。安宿の窓枠に切り取られた都会の風景の一場面が目に浮かんでくるような楽曲が揃っている素敵な作品である。「 Chuck Hall 」、彼の心優しき歌声は "MySpace" や "YouTube" で聴くことができる。 -- 数ヶ月を過ごしたロスの古ぼけたホテルは、ダウンタウンはリトル東京の一角にあった。管理人は日本人のおばさん、粗末なベッドにみすぼらしい小さな家具ひとつと共同のシャワーとトイレ。旅途中の夢見る青年や素性の知れない怪しき日本人たちが多く暮らしていた。青春の思い出のいっぱい詰まったあの安ホテルは、今もあの地にあるのだろうか。---
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2009年10月26日

アコスワンプ


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バンドメンバーがアラスカ (アンカレッジ) とフロリダ (キーウェスト) の遠隔地で暮らしていた5人編成の 『The Boys From Lick Hollow』。ライナーには、一緒にプレイする機会が間々ならない彼等の為に、友人たちがチェンソーや貴重な財産を質に入れて金を工面し本作は制作されたと紹介されている。-- C.B.Slick ( Fiddle, Guitar, Vocals ) / K.D.Yingling ( Banjo, Piano, Guitar, Vocals ) / R.B.Phenix ( Bass ) / L.W. Hinston ( Mandocello, Bass ) / J.J.Speed ( Drums, Vocals )。オリジナルとカヴァー曲が約半々の割合、全12曲を収録。一応、バンド名義だがオリジナル全てを手がけている 「K.D.Yingling」 がリードVoをとっているようで、彼のソロ作の趣が色濃い。個人的にスワンプと言えば南部の "Alan Gerber" を指すのだが、喉をつめ搾り出すように絡みつくヴォーカル・スタイルはアラン氏と同類のものを持っている。ニューオリンズ・ジャズの元祖 「Jerry Roll Morton」 作の "Don't You Leave Me Here / Alabama Bound (A-5)" に "Winin' Boy Blues (B-4)"。オリジナルの "Fixen (A-6)" に "Polluted Rivers (B-5)"。その大半がアコースティックでドラムレスなのに、その荒々しさはスワンプ魂そのものだ。これは彼のヴォーカル・スタイルがそう感じさせるのだろうが、タイトなリズム隊でも加えれば素晴らしいスワンプ音楽になったに違いない。「K.D.Yingling」 の祖母が大好きでよく演奏して聴かせたという "Kerry Mills" 作の "At A Georgia Camp Meeting (A-1)" をはじめとするインスト曲も、その荒削りなカッティング・ストロークの中には彼のロック魂が宿っているようだ。ラブタイム、ブルーグラス、トラディッショナル、カントリー、アーリージャズなど。様々なルーツ音楽が根っ子に在りながらもR&R魂が潜んだ "アコースティック・スワンプ" とでも名付けたい音楽である。-- ボーカル入りとインストが約半々、願わくば「K.D.Yingling」 の歌声をもう少し聴きたかったところ。彼等の所在には辿り着けなかったが、今もどこかで歌っているのだろうか。---
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2009年10月20日

自作自演バンド


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自作自演の疑いの濃い気球騒動でニュースを賑わしているコロラド。遡ること29年前、5人編成のカントリーロックバンド 『Potlatch』 は正真正銘の自作自演を奏っているが、こちらはコロラドで注目されることはなかったのだろうか。-- Ron Land ( Pedal steel, Acoustic & electric guitar, Percussion ) / Ron Lynam ( Banjo, Acoustic & electric guitar, Fiddle, Bass, Percussion ) / Dan Mahnke ( Drums, Acoustic guitar, Percussion ) / Greg Smith ( Acoustic guitar, Mandolin, Piano, Accordian, Percussion ) / Rick Starkey ( Bass, Saxophones, Flute, Percussion )、ゲストにハーモニカやチェロ奏者が参加している。全11曲収録、メンバーたちが楽曲を持ち寄ってるが凡庸なカントリーロックとは一味違う作品に仕上がっている。南部の香りのするミディアムテンポのバラード "Close To Your Love (B-2)" に表題曲の "With Everything Without (B-6)"。ご機嫌なパブロック風R&Rナンバー "Lazy Phase (B-1)"。オールドタイムにスィングしてる "Hang Your Head In Shame (B-3)"。哀愁さそうハーモニカ入りの穏やかなカントリーソング "Overwhelming Love Blues (B-4)"。A面も悪くはないが、B面には特に充実した素敵な楽曲が揃っている。バンジョー弦を爪弾く音が、長閑に歩く馬の姿を連想させる "The Engineer (A-2)"、陽気なカントリーソング "Stay With Me (A-3)" など。西海岸や南部など様々な音楽スタイルに影響を受けているのは、多くの州と州境を接するコロラドの地の利だとも思えたりもする。メンバーたちの足取りを追っても今の彼らには辿り着けなかったが、注目もされず消えていったのだろうか。無名のローカルバンドながら、なかなかいいバンドだと思う。-- バンド名の 「Potlatch」、ウィキペディアによれば "太平洋側北西部海岸のインディアン部族によって行われる祭りの儀式である" とある。メンバーの中にネイティブな人がいたのかも知れない。---
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2009年10月13日

ウィスコンシンの狼


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"2作目" は紹介済みのウィスコンシンのSSW 『Clay Riness』 の1作目。レコード番号は "OO1" で「Weary Wolf Records」 の1作目でもあるようだ。 過去紹介した同レーベル作品 「Eddie Allen」 や 「Roland Surey」と 同様に、プロデュースは 「Clay Riness」、録音スタジオ 「OM Studio」、エンジニア 「Jamie Goodsmith」 は共通している。-- 暫くリタイヤする前の2作目は、A・ギターの弾き語りのフォーキー色が色濃い作品だったが、本作ではパーカッション入りの楽曲もある先鋭的で攻撃的なサウンドに仕上がっている。ライナーには、"Some Blues, Old Jazz, Cold Jazz, Cool Jazz" なんて紹介してあるが、クレイ氏の音楽の根っ子にはブルースやジャズがあるのだろう。ブルース・スタイルの "Vernon County (A-2)" に "Knock Kneed Country Woman (B-4)"。ラグ・スタイルの "Movin' To The City Rag (A-4)"。サクスフォンとパーカッション入りのスウィング調 "Whippin' Rug (A-5)"。ヨーデル唱法入りのカントリーフォーク "Yodelin' Cowboy (B-3)"。高揚感を鎮めてくれる穏やかなフォキーソング "Me And my Old Man (A-3)"、"Rollin' In My Changes (B-1)"、"The Age Of Consent (B-5)"。1曲だけ共作があるが、全10曲オリジナル。時には激しく、時には穏やかに、A・ギターを爪弾きながら深みのある素敵な歌声を聴かせてくれる。-- 「Clay Riness」、2作目を紹介した時はなかったのだがオフィシャルサイトが 「MySpace」 に開設されている。若い頃の狼のような荒々しさは薄れたが、人生の粋を重ねた丸味のある優しい歌声を聴くことができる。---
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2009年10月05日

明日がもたらすもの


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Cindy Burger」 と 「Dave Hilgendorf」 からなるミズリーの男女フォークデュオ 『Saratoga』。彼等の素性は全くの不明、カバーもの中心だが素敵な歌声を聴かせてくれる。-- シンディ嬢 ( lead & backing vocals, tambourine ) に、デイブ氏 ( lead & backing vocals, acoustic guitar, electric guitar, bass, mandolin, tambourine, harmonica ) の2人だけで録音された、全10曲を収録。ニール・セダカの "Standin' On The Inside (A-1)"、サイモン&ガーファンクルの "Homeward Bound (A-2)"、ロギンス&メッシーナの "Danny's Song (A-3)"、キャロル・キングの "Will You Love Me Tomorrow (B-1)"、ジミー・ウェブの "By The Time I Get To Phoenix (B-2)"、オーストラリアのロックバンド 「The Easybeats」 の "Friday on My Mind (B-4)"、アメリカの "Lonley People (B-5)"。良く知られた名曲をリードVoをシェアし、もう片方がハーモニーをつけている。その中でも、朴訥な歌声のデイブ氏がリードをとる楽曲がいい感じだ。A・ギターの弾き語りにシンディ嬢がハーモニーをつける "Homeward Bound"、A・ギターの弾き語り "By The Time I Get To Phoenix" は心癒される出来である。大好きな曲 "Danny's Song" はシンディ嬢がリードをとっているが、デイブ氏の歌声で聴いてみたかったのがやや不満なところ。しかし、全編通して、いかにもマイナー作品らしい飾り気なさが心に染みる素敵な作品であることには違いない。-- 優しいメロディに2人の心地いいハーモニーが聴けるオリジナルの表題曲 "What Tomorrow Brings (A-5)"。直訳すると、"明日がもたらすもの"。自主制作された作品には、きっと2人の夢が託されていたのだろう。この作品は彼等の未来に何か変化をもたらしてくれたのだろうか。その後の「Saratoga」の消息はつかめなかった。彼等にとって、唯一の作品なのかも知れない。---
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